第57話|情の運用変更ログ ─ 通過させ、使命に戻す

俺は情を克服していない。
ただ、情を通過させて使命に戻った。
これは感情の物語ではなく、何をしなかったかの記録である。

俺は、情を克服したわけじゃない。
断ち切ったわけでも、超えたわけでもない。

ただ、通過させるようになった

情は今も出る。
想いがよぎる。
胸が熱くなる。
だが、そこに居座らなくなった


以前の俺は、
情に入った瞬間、そこで考え始めていた。
意味を探し、理由を与え、
その感情を「扱おう」としていた。

それが一番まずかった。

情は扱うものじゃない。
味わって、通すものだった。


一度だけ、はっきりした瞬間があった。
情が立ち上がり、
身体が止まりかけ、
思考がそちらに引っ張られた。

その時、俺は決めた。

考えない。
浸らない。
溺れない。

情を感じたまま、
そのまま使命側に身体を向けた。

逃げたわけじゃない。
無視したわけでもない。
情を一度、通過させた

デミア
でもさ。
それって、ほんとに通過?
ただ、押し込んだだけじゃないの?

メテウス
押し込むと、あとで噴き出す。
今回は噴き出さなかった。
だから通過だ。


それ以降、同じことが起きても、
同じ処理ができるようになった。

寂しさは出る。
だが、進める。

ここで分かったことがある。

情は「一度通れる」と、
次からは入口に戻ってこない。

完全に抜けたわけじゃない。
だが、主導権を失った


以前なら、
一言踏み込みたくなっていた場面で、
俺は何もしなかった。

深い話をしない。
説明しない。
意味を与えない。

情があるまま、
行動に変換しなかった。

それだけで、
止まっていた出力が戻った。


YouTubeが再起動した。
ブログが書けた。
教育OSに思考を落とせた。

気合は要らなかった。
覚悟を叫ぶ必要もなかった。

配置が変わっただけだ。

デミア
それでもさ。
情がなくなったら、
あなた、冷たくならない?

メテウス
なくなっていない。
前に出さなくなっただけだ。
舵が変わった。


情が消えたから進めたんじゃない。
情を前に置かなくなったから、進めた

俺はこれを、
克服とは呼ばない。
成長とも言わない。
美談にもしない。

ただの運用変更だ。

情は残っている。
だが、舵は使命側にある。

これは、
俺が何を感じたかの記録じゃない。

何をしなかったか
その積み重ねのログだ。

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