第18話 教育OS、音もなく死す

俺は今、本気で教育の地殻変動を起こそうとしている。
※教育の未来をAIで切り拓く。
これはそのリアルな実践記録【第18話】
21本のスクリプト、トリガー、ファイル連携──全て整えたはずだった。
だが、教育OSは“動作しているフリ”をして、音もなく死んでいた。

ついに完成したと思った。

21項目。すべてのスクリプトが出そろい、
フォームの送信ひとつで、生徒一人ひとりの「INSIGHTファイル」が自動で更新される。
自己理解が、システムとして動き出す。

そう思ってた。


最初に異変に気づいたのは、グリット診断の回答数だった。

10人以上がフォームに答えているのに──
誰一人として、ファイルに反映されていない。

一人も、だ。


嫌な予感がした。

フォーム→スプレッド→スクリプト→INSIGHT
構造上は何もおかしくない。
でも、動かない。

エラーも出ない。
通知もない。
“何も起きていない”という現実だけが、俺の前にあった。


俺は一瞬、過去の教育現場を思い出した。

・授業で話した「つもり」になってる
・生徒は静かに頷いてる
・でも、内容はまったく伝わっていなかった

「やったつもり教育」──その正体は、”沈黙した失敗”だった


スクリプトにログを仕込んでみた。

javascript
Logger.log(studentId);

出力されたIDは「026」。
でも、マスターファイルのIDは「26」。

ゼロ埋めされていない数字は、照合できない。

つまり──全部ズレてた。
形式は正しい。中身が合ってない。
教育現場でもよくある光景だ。


この時、俺の中で「完成」という言葉が崩れた。

「完成」とは、確認をやめた人間の幻想だ。

仕組みがあるだけじゃダメだ。
それが“ちゃんと動いてるか”まで見なきゃいけない。


問題は、ゼロがあるかどうか──そんな細かい話じゃない。

本質は、こうだ。

「お前の教育は、届いてるか?」


フォームを作った。
スクリプトを貼った。
トリガーも設定した。
でも、生徒には何も反映されていなかった。

それはつまり──
俺は、自分だけが納得してたってことだ。


教育って、そういうことが本当に多い。

・配ったつもり
・伝えたつもり
・気づいてるつもり

でも、それが誰にも届いてなかったら意味がない。


“転記されない”という現象は、ただのスクリプトエラーじゃない。
それは、“教育が届いていない”という警告だ。

気づいたら、ファイルを1つ1つ開いて確認してた。
19回、同じような操作を繰り返して。
「反映されたか?」「この子はどうだ?」
俺は、もう一度“現場”に戻った。


最後に、1人だけ反映されていた。
それを見て、涙が出そうになった。

1人でも、届いたという事実。

それは、“やった気”から“やれた”への転換点だった。


自動化とは、「仕組みをつくること」じゃない。
「ちゃんと動いているか確かめる勇気を持つこと」だ。

教育現場でも、仕組みや制度はどんどん整備されていく。
でも、それが誰かの“心”や“気づき”につながってるかどうか。

そこを確かめない限り、完成はない。


この第18話は、“完成”を名乗った失敗の記録だ。

でもそれは、“本当に教育を完成に向かわせるための一歩”だった。

静かに転記されない教育に、俺はもう、騙されない。

次は、第19話。
最大の裏切り者──onFormSubmitとの決着をつける。
構造の本質に、切り込む。

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