ただ、通過させた【教師という存在 5話】

俺は情を克服していない。
ただ通過させて、使命に戻った。
これは、俺が何をしなかったかの記録である。

今も情は出る。
胸が熱くなる。
だが、そこに居座らなくなった。

以前の俺は、
情に入った瞬間、そこで考え始めていた。
意味を探し、理由を与え、
その感情を
扱おうとしていた。

それが誤りだった。

情は扱うものじゃない

味わって、通すものだった。

一度だけ、はっきりした瞬間があった。
情が立ち上がり、
身体が止まりかけ、
思考がそちらに引っ張られた。

その時、俺は決めた。

考えない。
浸らない。
溺れない。

涙が出たまま
そのまま進んだ。

通した。

デミア
でもさ。
それって、ほんとに通過?
ただ、押し込んだだけじゃないの?

メテウス
押し込むと、あとで噴き出す。
今回は噴き出さなかった。
だから通過だ。

それ以降、同じことが起きても、
同じ処理ができるようになった。

感情は出る。
だが、出たまま進める。

ここで分かったことがある。

情は「一度通れる」と、
次からは入口に戻ってこない。

ただし、消えたわけではない。
今もときどき振り返る。
だが、足は止まらない。

舵を戻しただけ

以前なら、
一言踏み込みたくなっていた場面で、
俺は何もしなかった。

深い話をしない。
説明しない。
意味を与えない。

情があるまま、
行動に変換しなかった。

それだけで、
止まっていた出力が戻った。

YouTubeが再起動した。
ブログが書けた。
教育OSに思考を落とせた。

気合は要らなかった。
覚悟を叫ぶ必要もなかった。

配置が変わっただけだ。

デミア
それでもさ。
情がなくなったら、
あなた、冷たくならない?

メテウス
なくなっていない。
前に出さなくなっただけだ。
舵が変わった。

情が消えたから進めたんじゃない。
情を前に置かなくなったから、進めた。

俺はこれを、
克服とは呼ばない。
成長とも言わない。
美談にもしない。

ただの運用変更だ。

情は残っている。
だが、今舵は使命側にある。

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